それでは、レジュメとはどういう特徴を持っているのでしょうか。簡単に言ってしまえば、レジュメとは発表の内容をまとめたものです、そのうえで、大まかな構成の形式は決まっており、発表の内容については詳しく記す必要があります。
より詳しく見ていきましょう。
目次
レジュメとは何か
レジュメとは、もともと「概要」を意味するフランス語です。そこから転じて、発表する内容を順番通りにまとめた配布物を意味する言葉として使われるようになりました。なお、英語でのresumeは履歴書を意味していて、経歴や職歴を1~2枚の紙にまとめたものを指します。日本でもこちらの意味で使われるようにもなっていますが、本書で取りあげるのは履歴書ではなく、発表内容をまとめたという意味でのレジュメです。レジュメは、ミーティングや会議、ゼミ発表といった複数の人間が集まる場所において、発表者が自分の発表内容をまとめて他の参加者に対して配ります。
この「レジュメは参加者に配る」ということが重要です。なぜならばレジュメとは、それを「見る人のため」につくるからです。自分で調べたり考えたりしてて分かったことを、参加者にも理解してもらうためにレジュメはあります。さらに議論を行うのであれば、レジュメはプレゼンの内容を振り返って確認する資料にもなります。
なので、発表者が伝えたい情報は、口で説明するだけではなく、できるかぎりきちんとレジュメに挙げておく必要があります。そして、情報を分かりやすく示すためには、見やすいレジュメを作成する必要があります。そのための形式がどのようなものかを踏まえておけば、分かりやすいレジュメを作成することができます。
レジュメの大まかな構成
どのような分野であっても、レジュメは「基本情報」、「はじめに」、「本論」、「おわりに」、「参考文献」、「資料」の各パートから順番に構成されており、その上で「本論」は内容ごとにいくつかのセクションへ分かれています。「基本情報」は、タイトルや発表者名、日付など、プレゼンに関する基本的な情報です。必ず一番はじめに書きます。
「はじめに」・「本論」・「おわりに」が、発表の内容となります。「はじめに」は、どのような発表を行うのか、どのようなことについて調べたのか、などの全体の見通しを、まずは述べます。「本論」は、内容を具体的に説明する最も重要なパートです。説明する要点ごとに項目別に分けます。「おわりに」は、全体の内容を改めて最後にまとめます。場合によっては、これからさらにどのようなことを調べていきたいのかについての見通しを述べます。
「参考文献」は、発表で用いた参考文献のリストです。「資料」は、発表を分かりやすく説明するために用いる図や表、他の文献からの引用文などです。
レジュメの形式
ところで、プレゼンでの配布物はレポートではなくレジュメと呼ばれるのが普通です。発表内容をまとめたものなので、レポートと呼んでも構わないはずです。にもかかわらず、レジュメと呼ぶのはなぜでしょうか。それは、レポートと異なって、レジュメは冊子形式にしなくても構わないという違いがあるからです。これこそが、レジュメの大きなメリットでもあります。
レポートは、書籍と同じように内容が文章で記してあり、前から読み進めていきます。もし書籍が冊子形式にまとまっていなければ、手にとって読みにくくなってしまいます。レポートも同じです。冊子形式にまとめられる形でホッチキスなどで留めます。枚数が少なければ不要ですが、それは単に枚数が少ないからであり、冊子形式でまとめるのが前提です。
冊子形式であるレポートや書籍を読んでいたと仮定して、前の方のページに載っていた地図や表・グラフなどに言及していたのでもう一度見直そう、と考えたとします。その際には、いま読んでいるページを閉じて前のページを開き直します。それ以外にも、たとえば複数の図像を見比べながら文章を読んだり、その図像と関わりのある地図も同時に見ながら文章を読んだりした方が分かりやすいこともあります。書籍の判型の大きさだと、たいていはそれらすべてを同じページに収めるのは困難です。なので、複数のページに分けて載ることになります。ところが、冊子形式だと複数のページを同時には開けないので、結果として複数のページを行ったり来たりする必要があります。
書籍やレポートは普通は1人で読むのですから、不便であってもさほど困らないかもしれません。むしろ、バラバラになっているよりも冊子にまとまっている方が読みやすいので、レポートや書籍は冊子形式なのが普通とも言えます。
ところが、レジュメは発表の場で配られるわけですから、参加者の意志とは関係なく、発表はどんどん進んでいってしまいます。となると冊子形式だと、別のページを開いているうちに発表は進んでいってしまい、いまどの箇所について述べているのかを見失ってしまい、困ることもあり得ます。
けれども、プレゼンの内容を発表の順番に記してある用紙と、参考文献、グラフや表、図像が書いてある用紙が別々になっていれば、発表の内容をレジュメで追いつつ、資料などを一緒に見ながら聞けます。パソコンの画面に複数のウィンドウを同時に表示しているような感じです。これは、冊子形式にはないレジュメのメリットなのです。
レジュメとプレゼン
ただし、そもそも前の部分を見直したり他の箇所を見たりする必要のないようにプレゼンを構成するべきではないか、と考えるかもしれません。確かに、それは理想ではあります。ですが、世の中に完璧なプレゼンなどあり得ません。発表者としては完璧なものを作ったと思ったとしても、発表者には思いもよらなかった視点に基づいた疑問を、参加者が抱く場合は、決して珍しくないのです。その際に参加者は、発表を聞きつつ他の箇所を見直しながら考えるのが普通です。
さらに、プレゼンは相手を納得させるためにのみ行うわけではありません。他の参加者の力も借りて、内容をさらに練り上げていく場合もあります。プレゼン後の参加者との議論を通じて、さらにより優れた内容へと磨いていったり、新たな発想を得たりするわけです。したがって、本人としては前の部分を見直す必要のないレジュメを作れたとしても、参加者も同じように感じるとは限らないのです。
これと関わることとして、述べたい内容やその根拠となるデータは、レジュメにできるかぎり挙げます。レジュメに挙げずに省略してしまえば、発表後の議論のときに省略した部分を確認せねばならなくなり、無駄に時間を費やしてしまいます。そのような無駄をなくすためにも、レジュメにできるかぎりプレゼンの内容やデータを記す必要があるわけです。
ただし、プレゼンは発表時間があらかじめ定められているので、発表時間が短ければ、作成したレジュメの内容やデータを省略して、結果だけを挙げねばならない場合もあります。しかし、あくまでも発表のためのレジュメとしてそうすべきであるにすぎません。根拠やデータを手元に残しておかなければ、もう少し知りたいと思った参加者が質問したときに、すぐに答えられなくなってしまいます。なので、時間に応じて内容をカットしたレジュメを参加者に配ることになったとしても、自分の手元には詳しいレジュメを用意しておくべきなのです。
したがって、参加者に納得してもらえるようなプレゼンを行うには、内容が詳しく記されているレジュメを作成する必要があると言えます。
まとめ
ここまでのことをまとめると以下のようになります。
- レジュメは、参加者が理解できるように内容をまとめる
- レジュメは「基本情報」、「はじめに」、「本論」、「おわりに」、「参考文献」、「資料」の各パートから順番に構成されており、その上で「本論」は内容ごとにいくつかのセクションへ分ける
- レジュメは、参加者が発表中に様々な箇所を同時に閲覧できるようにするために、冊子形式にはしない
- レジュメに基づいた意見の交換を円滑に進めるために、レジュメはできるかぎり詳しく書く必要がある
さて、配布するレジュメが詳細なものでも簡略化したものでも、プレゼンを耳で聞いて考えながらレジュメを目で追うと、文章をそのまま書いただけでは、うまく情報を処理しきれずに、見失ってしまう可能性が高くなります。そのためレジュメでは、目で見て情報を理解しやすくするために箇条書きを用いるのが普通です。さらに、説明の内容を区分して項目の内容を示す項目名を付けることで、全体の流れをうまく誘導する必要もあります。箇条書きと項目名をうまく用いるには、その性質をきちんと抑える必要があります。
というわけで、続いては箇条書きと項目名について見てきますが、まずは箇条書きについて説明します。